ナナメなHIGOLOG

薬学生が日頃のアレコレや百合漫画のレビューをコソコソと書くブログです

『あの娘にキスと白百合を』名言集&解説レビュー 第5巻


 


 ※この記事の内容は2019年5月に発行された『あの娘にキスと合同誌を』にて、私が寄稿した『「あの娘にキスと白百合を」各話を名言で振り返る』に加筆修正を加えた内容です。

 

 

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  • 第5巻
    • 第21話 『白峰あやか失踪事件』
    • 第22話 『遠いブルーを見るだろう』
    • 第23話 『One Night Journey』
    • 第24話 『翼のあと』
    • 第25話 『エンドロール前夜』

 

 

 これから1巻ずつ『あの娘にキスと白百合を』の好きな部分を語らせていただきたいと思います。私がこの作品に魅力を感じている要素の一つに『言葉』があります。

 

 そこで、この度は作品の完結記念といたしまして、私の主観と偏見で選ばせていただいた本編各話の名言について軽い考察や回想を交えること共に、各巻巻頭に寄せられた言葉や各話の題名にも触れながら、缶乃先生が作り上げた『あの娘にキスと白百合を』という作品を振り返っていき、改めてその魅力を再認識していきたいと思います。

 

 『あの娘にキスと白百合を』をまだ読んだことがないという方には少しネタバレになってしまうかもしれないためご注意ください。


全巻読んだことがあるという方も、手元に用意して一緒に振り返りながら読み返していくことで、新たな発見することの手助けになれたら幸いです。

 

 

 

第5巻

 

 

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 Love is to be made all of sighs and tears

 『恋は、ため息と涙でできているもの。』

(第5巻1頁より)

 こちらの言葉は、四大悲劇で有名なイングランドの劇作家ウィリアム・シェイクスピアWilliam Shakespeare)による恋愛喜劇『お気に召すまま』(原題:As You Like It)から引用されているものです。

この作品の第2幕第5場において、Phoebeの台詞"Good shepherd, tell this youth what 'tis to love."という投げかけに対して、羊飼いである Silviusが答えた"It is to be all made of sighs and tears, And so am I for Phoebe."(原文)という台詞によるものでした。

 

恋や愛には、喜びや笑いといった一面もあれば、相手を想うが故の心の落ち込みや涙を流す一面もある。そんな叶わない想いを言葉に表した台詞でありました。

 

 第5巻では叶わない恋という面よりは、恋をしている心の弱さ故のため息や涙といった部分から見ていくと、この巻頭に寄せられた言葉の真意というものを見ることができるかもしれません。

 

 

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『あの娘にキスと白百合を』名言集&解説レビュー 第4巻

 


 ※この記事の内容は2019年5月に発行された『あの娘にキスと合同誌を』にて、私が寄稿した『「あの娘にキスと白百合を」各話を名言で振り返る』に加筆修正を加えた内容です。

 

 

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  • 第4巻
    • 第16話 『ブルーバード・ドライブ』
    • 第17話 『最果ての日』
    • 第18話 『エンチョウセンの彼女』
    • 第19話 『それが愛だと言ってくれ』
    • 第20話 『夏のあとさき』

 

 

 これから1巻ずつ『あの娘にキスと白百合を』の好きな部分を語らせていただきたいと思います。私がこの作品に魅力を感じている要素の一つに『言葉』があります。

 

 そこで、この度は作品の完結記念といたしまして、私の主観と偏見で選ばせていただいた本編各話の名言について軽い考察や回想を交えること共に、各巻巻頭に寄せられた言葉や各話の題名にも触れながら、缶乃先生が作り上げた『あの娘にキスと白百合を』という作品を振り返っていき、改めてその魅力を再認識していきたいと思います。

 

 『あの娘にキスと白百合を』をまだ読んだことがないという方には少しネタバレになってしまうかもしれないためご注意ください。


全巻読んだことがあるという方も、手元に用意して一緒に振り返りながら読み返していくことで、新たな発見することの手助けになれたら幸いです。

 

 

 

第4巻

 

 

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 All our dreams can come true, if we have the courage to pursue them.

 『追い求める勇気があれば、すべての夢はかなう。』

(第4巻1頁より)

 こちらの言葉はミッキーマウスの生みの親として有名なウォルト・ディズニーのものであります。

 

ディズニーリゾートは夢の国として有名であり、まさに夢のようなひとときを提供している一方で、ウォルト自身は過去に幾多もの挫折や失敗を経験していました。

 

そんな彼が様々な場で口にしていたというこの言葉。

成功者であるから、ディズニーの生みの親であるから夢を与えるための、そういう意味の軽々しい言葉ではなく、心の底から夢を叶えたいと貪欲に追求した人の経験から出てきた真意のようなものなのでしょう。

 

 

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『あの娘にキスと白百合を』名言集&解説レビュー 第3巻

 ※この記事の内容は2019年5月に発行された『あの娘にキスと合同誌を』にて、私が寄稿した『「あの娘にキスと白百合を」各話を名言で振り返る』に加筆修正を加えた内容です。

 

 

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 これから1巻ずつ『あの娘にキスと白百合を』の好きな部分を語らせていただきたいと思います。私がこの作品に魅力を感じている要素の一つに『言葉』があります。

 

 そこで、この度は作品の完結記念といたしまして、私の主観と偏見で選ばせていただいた本編各話の名言について軽い考察や回想を交えること共に、各巻巻頭に寄せられた言葉や各話の題名にも触れながら、缶乃先生が作り上げた『あの娘にキスと白百合を』という作品を振り返っていき、改めてその魅力を再認識していきたいと思います。

 

 『あの娘にキスと白百合を』をまだ読んだことがないという方には少しネタバレになってしまうかもしれないためご注意ください。


全巻読んだことがあるという方も、手元に用意して一緒に振り返りながら読み返していくことで、新たな発見することの手助けになれたら幸いです。

 

 

 

第3巻

 

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 Love is like a flower you've got to let it grow

『恋とは、育てなくてはいけない花のようなもの』

(第3巻1頁より)

 この言葉は、1973年にリリースされたジョン・レノンのアルバム『マインド・ゲームス』(Mind Games)の表題曲『マインド・ゲームス』の歌詞から引用されています。

 

私は洋楽についての知識が乏しく、ジョン・レノンが作詞した歌詞について日本語訳含めて内容を深く知っているものはImagineStand by me程度しか無いため、今回の歌に関しても時代背景や歌の主張を考察するのは素人が手を出してはいけないと思ったため深くは言及しません。

 

しかし、この歌詞の直前には”Love is the answer and you know that for sure”『愛が答えであり、それはあなたたちもよくわかっているはず』といった一節があり、平和を求める愛を強く訴えている曲であることは素人ながら感じ取ることができました。

 

 

 

第11話 夜明けのルー・ガルー

 

 黒沢「もっと褒めてほしいの? 白峰さんはさみしがりだもんね? ねえ白峰さん ここで満足しちゃうならいらないよ」

(第3巻11話25~26頁)

 実力テストで一科目だけ黒沢に勝つことができて報告してきた白峰に対して、普段は温和な黒沢をモンスターたらしめている場面でした。

 

 ルー・ガルーとはフランス語(loup-garou)で『狼男』『人狼』という意味があります。

この場合の人狼とは誰を指しているのか。

それは明白で、自分がただの人間であることを気付かせて欲しいモンスター、黒沢のことであります。

 

 そんな黒沢がまさしく狼の如く白峰の肩へ噛みつくシーンが脳裏に焼き付く回となりました。

自分以外の子と遊ぶ黒沢に嫉妬する白峰、保健室で二人きり、熱に浮かされて汗をかき肌着のみになる、そんな全ての伏線を回収して完結している第11話の全30頁。

 

漫画の構成などに対して専門的な知識は持っていませんが、これほど鮮やかな漫画こそ満点なんだと素人ながら感じてしまうような素晴らしい回でした。

 

 余談ですがこの回を読み終えたとき、白峰の肩についた歯形を同室の瀬尾が見てしまったら、どんな反応をして何を感じるんだろう、なんていう妄想を巡らせて悶々としていました。

 

 

 

第12話 棘のない薔薇はない

 

 白峰「何かあったらと思うと 心臓がいくつあっても足りないの 心配させないで」

(第3巻12話54頁)

 初の園芸部登場回ですが彼女らが主役の話はもう少し後で、今回も白峰と黒沢の話になりました。

 

 前回、特別な存在だと思っていた白峰に「特別って言うけど 貴女のそれは 自分に勝てる人間なら誰だって良いんでしょ?」(第2巻12話11頁)と言われてしまった黒沢は、

自分が求めている特別な存在とは何なのか、白峰に抱いているこの気持ちは何なのか、白峰以外に特別な存在がいるのか、自分が普通の人間だとわかってしまったら白峰との関係はなくなってしまうのか、そんなことを考えていた黒沢へ響いた白峰の言葉。

 

そして、「貴女のこと 気にしている人だっているんだよ。」(第3巻12話56頁)という言葉によって、今の関係性に理由なんて要らないのだと気が付いた黒沢は救われました。

そんな黒沢は自分を普通の人間として迎え入れ、能力を関係無しに必要としてくれている園芸部を心地よい居場所だと感じていきました。

 

 今回の題名は『棘のない薔薇はない』でしたが、日本でよく耳にする言葉は『綺麗な薔薇には棘がある』だと思います。

言葉の意味としては良いことの裏には必ず悪いことが隠されている、というような感じに様々な事柄を対象として使われていることがあると思います。

綺麗な人には必ず裏がある。

悪いと決めつけることをせずに、外側から客観的に見る。

どんなに優れた人でも苦手なことはある。

等々の使われ方をしています。

 

この『棘のない薔薇はない』という言葉は17世紀フランスのカトリック聖職者である聖フランシスコサレジオが1620年に記した『神愛論』(原題:Traité de l'amour de Dieu)が元になっており、第9巻第1章に"point de roses sans éspines"『棘なくして薔薇はない』という一節があります。

この言葉は今のフランスでもよく使われる諺のようになっており、現代では"Il n'y a pas de roses sans épines." 又は "Il n'y a point de roses sans épines."『棘のない薔薇はない』という言い方をするそうです。

 

今回出典を見つけられたのは17世紀の書物でしたが、もしかしたらもっと昔から諺のように使われてきたのかもしれません。

 

 

 

第13話 ぼくらの紅薔薇戦争

 

 大城「・・・ついてきてくれるか? 十和子」

(第3巻13話72頁)

 今回から園芸部の二人、大城雪奈(おおしろゆきな)と三田十和子(みたとわこ)の歪な主従百合の話が始まりました。

(題名は紅薔薇ロサ・キネンシス)戦争とでも読みたいところですね。)

 

題名の元ネタは舞台のモデルを同じく宮崎県仙台市としている『ぼくらの七日間戦争』(著:宗田理)をオマージュしたものでしょうか。

 

 主である大城は使用人の孫娘である三田を、かけがえのない存在であると思っていますが、言葉にもあるように「ついてきてくれるか」と聞いているように、ただ「ついてきてくれている」親友だと思っています。

三田にとって大城は主なんかではなかったのですが……。

 

第13話だけを読んでモノを語るのは難しいですね。

とにかく今回は、大城の気品高い正義感や信念の強さといった部分が大きく描かれていたと思います。

 

 

 

第14話 ステイ・ゴールド

 

 三田(何も混じらない今が一番美しいから 変わらない確かなものが欲しい 宝箱に鍵をかけるように アルバムをそっと閉じるように 不安を捨てて眠りたい)

(第3巻14話106~107頁)

 大城(十和子は好きでいたかったんだ 部活もバラ園も 私のことも・・・ だから 十和子だけでも取りもどす)

(同122頁)

 園芸部編における衝撃の回となっていて、三田の歪んだ愛情の形を目の当たりにして鳥肌が立った読者もいらっしゃるかと思います。

今回は名言を2つから絞れずにいて、やはりこれらの言葉はお互いの気持ちの掛け合いとして成立してこその名言であると思ったため、このような形を取らせていただきました。

 

今、この瞬間を変えたくない、ずっとこのままでいたい、これ以上を求めない、今の全てを終わらせてでもこの一番美しい瞬間を心の内に留めて永遠にしたい。

未来へ向けて変化を求め、これからの永遠(とわ)を求める大城雪奈(せつな)と、今この大城との瞬間(刹那)を摘み取って永遠なものにして自分だけのものにしたい三田十和子(とわ)の想いが交錯していることが伝わる回でありました。

(名前に繋げて考えるのは少し失礼かもしれませんが、あくまでも考察の一例として挙げさせていただきました。)

 

 題名の”Stay Gold"は英語のスラングであり、直訳すると『金のままでいろ』となりますが、多くの場合で『輝き続けろ』といった意味になるかと思います。

本作品では恋や青春を謳歌して輝き続けろといった意味が良いなと感じました。

 

しかし読後では、大城目線では『いつまでも輝き続けて』で、三田目線では『このまま輝いたままでいて』というようなダブルミーニングにも感じられました。

 

 

第15話 きらめく

 

 大城、三田(きっともう少し 優しい私たちになれるよ)

(第3巻15話148頁)

 園芸部編完結回です。園芸部のバラ園は規模が縮小されるも存続し、黒沢も正式に部へ残ることが決まった回となりました。

 

三田が大城の前にひざまずいて足の甲に従属を誓ってキスをするシーンは、新しい主従百合の形が誕生した瞬間とも言えるものでした。

 

 今回はもちろん次点での名言があります。白峰を園芸部へ勧誘する黒沢が告げた言葉「理由がなくても白峰さんと一緒にいたいな」(第3巻15話154頁)です。

このシーンは絵と合わせて何度でも読み返したくなる部分です。徐々に白峰への想いが変化している黒沢を感じ取れる良い言葉だと思います。

 

 

 

↓第4巻の記事こちらから↓(順次公開予定)

 

 

 

 

 

 

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『あの娘にキスと白百合を』名言集&解説レビュー 第2巻

 ※この記事の内容は2019年5月に発行された『あの娘にキスと合同誌を』にて、私が寄稿した『「あの娘にキスと白百合を」各話を名言で振り返る』に加筆修正を加えた内容です。

 

 

↓第1巻の内容はこちら↓

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  • 第2巻
    • 第6話 星の学徒
    • 第7話 ロマンチストの最期
    • 第8話 よろしく哀愁
    • 第9話 リバース
    • 第10話 P.S.この世の春のために

 

 

 これから1巻ずつ『あの娘にキスと白百合を』の好きな部分を語らせていただきたいと思います。私がこの作品に魅力を感じている要素の一つに『言葉』があります。

 

 そこで、この度は作品の完結記念といたしまして、私の主観と偏見で選ばせていただいた本編各話の名言について軽い考察や回想を交えること共に、各巻巻頭に寄せられた言葉や各話の題名にも触れながら、缶乃先生が作り上げた『あの娘にキスと白百合を』という作品を振り返っていき、改めてその魅力を再認識していきたいと思います。

 

 『あの娘にキスと白百合を』をまだ読んだことがないという方には少しネタバレになってしまうかもしれないためご注意ください。


全巻読んだことがあるという方も、手元に用意して一緒に振り返りながら読み返していくことで、新たな発見することの手助けになれたら幸いです。

 

 

 

第2巻

 

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 Love is tyrant sparing none

『恋は、何人をも容赦しない暴君である。』

(第2巻1頁より)

 こちらの言葉は、17世紀のフランスの劇作家ピエール・コルネイユ(Pierre Corneille)氏による、1637年に公開された代表作『ル・シッド(Le Cid)』の劇中第1幕第2場での台詞"L'amour est un tyran qui n'épargne personne."(フランス語原文)から引用されたものでした。

 

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『あの娘にキスと白百合を』名言集&解説レビュー 第1巻

 ※この記事の内容は2019年5月に発行された『あの娘にキスと合同誌を』にて、私が寄稿した『「あの娘にキスと白百合を」各話を名言で振り返る』に加筆修正を加えた内容です。

 

  • 第1巻
    • 第1話 天才さんと秀才さん
    • 第2話 孤島のモンスター
    • 第3話 青春は銃創
    • 第4話 シークレットオブマイガール
    • 第5話 さらばストロベリー・エイジ

 

 

 これから1巻ずつ『あの娘にキスと白百合を』の好きな部分を語らせていただきたいと思います。私がこの作品に魅力を感じている要素の一つに『言葉』があります。

 

 そこで、この度は作品の完結記念といたしまして、私の主観と偏見で選ばせていただいた本編各話の名言について軽い考察や回想を交えること共に、各巻巻頭に寄せられた言葉や各話の題名にも触れながら、缶乃先生が作り上げた『あの娘にキスと白百合を』という作品を振り返っていき、改めてその魅力を再認識していきたいと思います。

 

 『あの娘にキスと白百合を』をまだ読んだことがないという方には少しネタバレになってしまうかもしれないためご注意ください。


全巻読んだことがあるという方も、手元に用意して一緒に振り返りながら読み返していくことで、新たな発見することの手助けになれたら幸いです。

 

 

第1巻

 

 

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 All's fair in love and war.
『恋と戦争は手段を選ばない。』

(第1巻1頁より)

 こちらの言葉は英語圏では有名なことわざのようなものらしく、2003年に公開された映画『10日間で男を上手にフル方法』(原題:How to Lose a Guy in 10 Days)の劇中で用いられたものが有名とのことでした。

 

 

 直訳すると『恋と戦争では全てが正しい』となりますが、この言葉の真意は、人間はある目的のためなら手段を選ばないというものだと推測できます。

ですが、この作品においては『好きな人を自分の物にするためには手段を選ばない』もしくは『好きな人のためなら何でもする』というような解釈が適切だと私は感じました。

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