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『あの娘にキスと白百合を』名言集&解説レビュー 第2巻

 ※この記事の内容は2019年5月に発行された『あの娘にキスと合同誌を』にて、私が寄稿した『「あの娘にキスと白百合を」各話を名言で振り返る』に加筆修正を加えた内容です。

 

 

↓第1巻の内容はこちら↓

mogkor.hateblo.jp

 

 

 

 

 これから1巻ずつ『あの娘にキスと白百合を』の好きな部分を語らせていただきたいと思います。私がこの作品に魅力を感じている要素の一つに『言葉』があります。

 

 そこで、この度は作品の完結記念といたしまして、私の主観と偏見で選ばせていただいた本編各話の名言について軽い考察や回想を交えること共に、各巻巻頭に寄せられた言葉や各話の題名にも触れながら、缶乃先生が作り上げた『あの娘にキスと白百合を』という作品を振り返っていき、改めてその魅力を再認識していきたいと思います。

 

 『あの娘にキスと白百合を』をまだ読んだことがないという方には少しネタバレになってしまうかもしれないためご注意ください。


全巻読んだことがあるという方も、手元に用意して一緒に振り返りながら読み返していくことで、新たな発見することの手助けになれたら幸いです。

 

 

 

第2巻

 

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 Love is tyrant sparing none

『恋は、何人をも容赦しない暴君である。』

(第2巻1頁より)

 こちらの言葉は、17世紀のフランスの劇作家ピエール・コルネイユ(Pierre Corneille)氏による、1637年に公開された代表作『ル・シッド(Le Cid)』の劇中第1幕第2場での台詞"L'amour est un tyran qui n'épargne personne."(フランス語原文)から引用されたものでした。

 

 

恋を暴君に例えることで、自らの中に自分では制御できないような気持ちを形容するに相応しい言葉だと感じました。

 

第2巻は天文部の3人と秋月の話を中心に話が展開していきますが、この言葉を胸にしまって読み進めると、登場人物のまた違った感情に気が付くことができるかもしれません。

 

 

 第2巻の表紙には白百合に加えてソメイヨシノが描かれています。

 

星野との別れや秋月との出会いが描かれているこの巻では、桜の花は『出会い』と『別れ』の季節を表現するのに最適だと思いました。

 

 

 

第6話 星の学徒

 

 上原(お別れがさびしいことは 正しい言葉じゃくつがえらないよ)

(第2巻6話12頁)

 初の天文部回ということでまさしく「星に願いを」というお話でした。

 

先輩である星野真夜が星を学ぶために第一志望に合格すると離ればなれになってしまう。

 

一方、星の勉強を諦めてエスカレーター式に大学へ進学すれば、星野と離れずに一緒にいられる。

 

そんなジレンマを抱えている後輩の上野に、星野を邪魔しないで応援するように諭してくる日下部千春の存在。

 

 

 この言葉は正論をぶつけてくる日下部に対して、悲しみを乗り越えられない上野が思ったもの。

 

星のように輝いていて遠い存在である星野のことを、上野はまだまだ近くで感じていたかったのだと思います。

 

 また、星に願いをと書きましたが、もちろん最後の

「お星さまにお願いするなら どうかせんぱいの行く道を 明るく照らしてあげてね」(第2巻6話31~32頁)

も、是非とも名言集に加えたい言葉でした。

 

こちらの言葉は、上原の純情さがよくわかる素晴らしいものであり、題名の『星の学徒』という言葉にも繋がっている相応しい台詞でありました。(よくよく考えてみたらこっちの方が名言では・・・恋愛標本にもなってるし・・・)

 

 

 第6話の扉絵(第2巻4~5頁)には、星野が作ったシロツメクサの花冠を上原と日下部が被っている姿が描かれています。

 

シロツメクサはクローバーの花として有名ですが、花言葉は『私を思って』や『約束』といった言葉があります。

 

作中では上原や日下部が中心に話が進んでいくため、星野の気持ちというのはあまり描かれていませんが、

このシロツメクサの花冠を『私を思って』という気持ちで上原や日下部に贈ったのであれば、作品がより深く読めてくるかもしれません。

 

 

 

第7話 ロマンチストの最期

 

 日下部(このまま誰にも見つからなくて 寒さと空腹で死んでしまったら おとぎ話みたいで素敵かもしれないな)

(第2巻7話56~58頁)

 星野を敬愛してるが故に、星が見れなくても先輩がいれば良いと、心に秘めていた想いを告げてしまった日下部。

 

寮の物置に閉じ込められてしまい、寒さと空腹の中で星野は窓にルーベンスの絵が、と冗談を言ってみせた。

 

ルーベンスの絵と言えば、児童文学の名作『フランダースの犬』(著:ヴィーダ)に出てくるアントワープの聖母大聖堂の二つの祭壇画が有名です。

 

日下部は遠くへ行ってしまう先輩とこのままずっと一緒にいられたら、という想いから『フランダースの犬』のようなロマンチックで悲劇的な主人公を夢見ていたのかもしれません。

 

 

 また、このときのシーンで描かれている花は鐘のような形で特徴的ですが、恐らく『ホタルブクロ』だと思われます。(イチョウ科フクロブクロ属の別の花かも知れないし、架空の花かもしれませんが・・・・・・)

 

ホタルブクロはその名前の通り、ホタルが舞うような初夏に花を咲かせており、花が提灯のような形になっていることからも『提灯花』という別名があります。

 

作中でも寮の物置に閉じ込められた2人を照らすように花が咲いていることがわかりますが、

日下部が思い描いた『おとぎ話』のような空間を演出するのに相応しい花だと思いました。

 

 

 

第8話 よろしく哀愁

 

 秋月(あたしは都合の良い存在でそれ以上でも以下でもないけど この人のために何かしたいと思うのは 間違ってるのかな)

(第2巻8話82頁)

 本編では初の中等部生である秋月伊澄の登場回です。

 

カップリングとしてだけでなく、個人として見たときにも秋月の性格や言動は私のお気に入りです。

 

お気に入りにしやすいというか、作中でも犬耳を生やされていたり(第2巻8話78頁)と、

ペットのようにしたくなるというかそばに置きたくなるような、そんな愛おしさを持っているのだと私は感じました。

 

 

 日下部の少し身を引いた客観的で冷静な態度と対称的な存在が非常に心地よく感じます。

 

とにかく真っ直ぐで純情な清い心を持っている秋月は、日下部に対する感情は自分では理解できていないし、

自分の行動や気持ちが全然分からないけど、とにかく日下部のためになりたいという気持ちだけを信じて行動しています。

 

中等部らしい若さと高等部らしい恋愛の溝を共に感じることができる素晴らしい回でありました。

 

 

 

第9話 リバース

 

 秋月「あんたにとって居ても居なくても構わないヤツでいるのは イヤなんだよ」

(第2巻9話119頁)

 前話に続いて秋月と日下部のお話で、秋月が少しずつ自分の気持ちに答えを見つけてきた回です。

 

私はやっぱりこの秋月の真っ直ぐで純粋な幼さが含まれている言葉に、若さに内包されている儚さや脆さのようなものを感じてしまい、作中の中でも特に好きなキャラクターです。

 

 

 日下部はそんな秋月から向けられる好意に気が付き、以前星野へ一方的に好意を伝えてしまったこともあって、星野の気持ちを改めて理解することができました。

 

そんな秋月の気持ちを一番理解している日下部はその気持ちへの答え方が分からないが悪い気はしておらず、

自分と同じような悲しみを味わって欲しくないという思いからか、秋月にはこれからも共にいることを許した、そんな回でありました。

 

まさしく、日下部にとっては好意を向ける側から向けられる側へ、逆(Reverse)の立場となったわけです。

 

 ちなみに、この告白の台詞の後に「・・・どうして?」(第2巻9話120頁)って聞いちゃう日下部はドSですね。

ここも含めて素晴らしいシーンになっています。

 

 

 余談ですが、恋愛標本に寄せられている言葉は、「求めたように、求められることなんて・・・きっとそう多くはないんだろう」(第2巻9話121頁)でした。

 

こちらも確かに名言ではありましたが、今回は秋月の強い感情が溢れ出ている告白の台詞を選ばせていただきました。

 

この言葉とこのシーンは、作品の中でもかなり上位に入るほど好きですが、私の秋月贔屓が入っているかもしれません。

 

 

第10話 P.S.この世の春のために

 

 秋月「後のことはどーんと任せてっ 安心して卒業してください!」

(第2巻10話149頁)

 日下部と星野が喧嘩していた理由がずっと気になっていた秋月。

 

しかし、いくら考えたところでそれはわからず、ましては答えが分かったとしても今の関係は何も変わりはしない。

 

そんな考えから出た星野へのこの宣戦布告とも取れるようなこの言葉。

 

秋月の幼さや優しさ、日下部を想う気持ちが存分に発揮されている、なんとも秋月らしい言動だと思います。

 

秋月贔屓でしょうか・・・。

 

 

 

↓第3巻の記事こちらから↓(順次公開予定)

 

 

 

 

 

 

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