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『あの娘にキスと白百合を』名言集&解説レビュー 第4巻

 


 ※この記事の内容は2019年5月に発行された『あの娘にキスと合同誌を』にて、私が寄稿した『「あの娘にキスと白百合を」各話を名言で振り返る』に加筆修正を加えた内容です。

 

 

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 これから1巻ずつ『あの娘にキスと白百合を』の好きな部分を語らせていただきたいと思います。私がこの作品に魅力を感じている要素の一つに『言葉』があります。

 

 そこで、この度は作品の完結記念といたしまして、私の主観と偏見で選ばせていただいた本編各話の名言について軽い考察や回想を交えること共に、各巻巻頭に寄せられた言葉や各話の題名にも触れながら、缶乃先生が作り上げた『あの娘にキスと白百合を』という作品を振り返っていき、改めてその魅力を再認識していきたいと思います。

 

 『あの娘にキスと白百合を』をまだ読んだことがないという方には少しネタバレになってしまうかもしれないためご注意ください。


全巻読んだことがあるという方も、手元に用意して一緒に振り返りながら読み返していくことで、新たな発見することの手助けになれたら幸いです。

 

 

 

第4巻

 

 

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 All our dreams can come true, if we have the courage to pursue them.

 『追い求める勇気があれば、すべての夢はかなう。』

(第4巻1頁より)

 こちらの言葉はミッキーマウスの生みの親として有名なウォルト・ディズニーのものであります。

 

ディズニーリゾートは夢の国として有名であり、まさに夢のようなひとときを提供している一方で、ウォルト自身は過去に幾多もの挫折や失敗を経験していました。

 

そんな彼が様々な場で口にしていたというこの言葉。

成功者であるから、ディズニーの生みの親であるから夢を与えるための、そういう意味の軽々しい言葉ではなく、心の底から夢を叶えたいと貪欲に追求した人の経験から出てきた真意のようなものなのでしょう。

 

 

 

 

第16話 『ブルーバード・ドライブ』

 

 瀬尾「萌のことをひとりじめしたいのが止まらなくて ごめんね 本当はもっとヤなことずっと考えてる でも自分じゃどうにもできなくて だって自分は萌のためにこんなに・・・」

(第4巻16話10~11頁)

 陸上部ペア伝説の『萌断ち回』。

走る理由を二階堂に依存していて独占したい瀬尾と、自分のために走ってくれている瀬尾が大好きだけど本当の走る理由を見つけて欲しい二階堂との衝突。

 

名言にしたい言葉は数多くありましたが、瀬尾の心の内に秘めている独占欲や二階堂への不満、心の弱さといったものを曝け出しているシーンから抜粋させていただきました。

 

この後に続く言葉は押し殺した瀬尾でしたが、「・・・苦しい たすけて萌・・・」(第4巻16話11頁)と助けを求めており、普段から瀬尾がどれほど二階堂を意識していて、どれだけ二階堂を想って走っていたのか、そんな二人の共依存的な部分が描かれているシーンでありました。

 

 

 

第17話 『最果ての日』

 

 瀬尾「同じような後悔したくないから 自分が何をしたいのかちゃんと考えなくちゃ 萌に頼らずに決めなくちゃって思って」

(第4巻17話61頁)

 自分のために走ることで、二階堂との距離を一度考え直そうとした瀬尾。

そんな前に進み出した瀬尾を複雑な気持ちで受け止めた二階堂。それぞれの想いと気持ちが少しずつズレてきたところで、二階堂無しで自分の気持ちのために黒沢と勝負した瀬尾は、自分の気持ちを再確認し改めることができた。

 

精神的に成長した瀬尾と二階堂の関係は、今までの陸上部という関係性が無くなってしまいましたが、これまで以上の愛情の強さを感じることができる回となりました。

 

 余談ですが、私は1本の傘を差して一緒に歩くシーンが好きで、お互いに傘を持ち合っている部分や、二階堂が持つときには瀬尾側に寄せて二階堂自身は少し肩が濡れそうになっている部分が、とても繊細に描かれているシーンだと感じました。

 

 

 

第18話 『エンチョウセンの彼女』

 

 町田「く・・・黒沢さんっ お おはよう!!」

(第4巻18話97頁)

 黒沢と中学の同級生であった町田郁(まちだかおる)の初登場回は第2巻第6話と第7話の間の『あのキス小劇場』(第2巻33頁)でした。

 

 中学の頃、黒沢の才能に憧れを抱いていた町田であったが、人を寄せ付けない雰囲気からか話しかけることができずに転校することになってしまった。

しかし、高校で再会した黒沢は周りと上手くやっており、自分の方が先に黒沢のことを知っていたのに、という嫉妬と後悔の念を抱くようになっていた。

 

中学の頃に拾っていた黒沢のペンを介して、黒沢と話すことができるようになった町田の話でありました。

 

 

 

第19話 『それが愛だと言ってくれ』

 

 猪上「私が思うに友情というのは そういう風に傷つくこともあるけど・・・ 相手の人生につき合う覚悟のことです」

(第4巻19話116~117頁)

 町田、猪上小(いのうえこはぎ)、鹿間(しかま)もみじの仲良し3人組のお話です。

 

名言と題名には繋がりがあるように感じました。

このことについては最早説明するまでも無いのかもしれませんが、友情とは元来こういう形のものであって愛情の一種であるべきものなのだと、改めて考えさせられるような言葉でありました。

 

 余談ですが、三人の名前については、町田を「ちょう」と読み替えると花札の役の一つ「猪鹿蝶(いのしかちょう)」が元になっていると思いました。

「牡丹に蝶」と「萩に猪」、「紅葉に鹿」の3枚を集めることで役が完成するものです。

こうして名前の由来を調べると、この3人は1人が欠けてしまっても成り立たないものだと感じることができ、名前1つにも缶乃先生の思いが込められていると思いました。

 

町田の名前は牡丹とは直接結びつく字ではありませんが、「郁」という字には「香りが良い、かぐわしい」という意味もあるため、花札から考えるとふさわしい名前であると思います。

 

 

 

第20話 『夏のあとさき』

 

 瀬尾「萌にそばにいてほしい 萌にしあわせだって思ってほしい 萌のことしあわせにしたい 結局私のやりたいことってそれなんだって思ったよ・・・」

(第4巻20話150~151頁)

 陸上部ペア推しに方にとっては涙を流してコマが滲んでしまった方もいるのではないでしょうか。

 

瀬尾が大きな一歩を踏み出した成長が見られる回となりました。

瀬尾が自分のために自分を見つめ、自分のために二階堂のことを想い、お互いのために決断を下したということ。

「やっぱり萌がいないと全然ダメみたい」(第4巻20話147頁)と言いつつも、もう二階堂に依存している瀬尾の姿はなく、二人でこれからの人生を歩み始めます。

 

『追い求める勇気があれば、すべての夢は叶う。』

――巻頭の言葉をそのまま表現しているようなお話でありました。

 

 

 第4巻20話154~155頁の見開きでのコマ割りは非常に芸術性が高く息を飲みました。

 

読んでいる読者をその空間に引き込み、セリフは無いけれど2人の表情と目線から感情が強く訴えられており、均等なコマ割りの中でもその場の間と空気が伝わってくるシーンとなりました。

 

たったの6コマ、されど6コマ。

 

ただの紙に印刷された絵ではありますが、そんな絵とは思えないほどの情報が伝わってきて、缶乃先生がこの6コマに注いだ情熱というものを強く感じました。

 

 

 余談ですが、二階堂が瀬尾だけに見せるのであろう、恋をしている人がその人へ向ける無意識的な笑顔(第4巻20話148頁1コマ目)というのは、とても眩しく青く感じるもので胸がキュッと締め付けられるような感覚がします。

 

第4巻の前半では、悩んでいたり泣いていたりする二階堂の顔が多かった反動で、第20話で二階堂が見せた笑顔は今までの笑顔よりも一層素敵なものに見えました。

 

 

 

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