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新作百合漫画レビュー・感想『ロンリーガールに逆らえない』(著:樫風)

 

 

作者の樫風先生(Twitter,pixiv)は今回の『ロンリーガールに逆らえない』が初の単行本であり、他には百合姫から出版されている『SHIBUYA ギャル百合アンソロジー』における「知らない私も好きですか?」や、『カヌレ スール百合アンソロジー』における「私の白い薔薇」など様々な百合アンソロジー本に参加されている作家である。

 

 

本作品はコミック百合姫2019年12月号より連載が開始され、毎月1話ずつ更新され2020年4月号までの1~5話に加えて、おまけ3ページが描き下ろしとして追加され単行本が発売された。

 

百合のジャンルとしては、彩花の秘密を知っている空が優位な主従百合に近いと思うが、彩花の世話好きな性格から空の面倒を見ているようにも見える不思議な関係性で描かれている。

 

 

 

概要

 

 

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『ロンリーガールに逆らえない』
著:樫風
発行日:2020年5月1日
発行元:一迅社
価格:680円+税

 

桜井彩花は文武両道な優等生。
しかし、本番に弱いせいで高校受験に失敗、滑り止めの高校に行くことに。
大学受験こそ失敗できないと悩む彩花は、
担任の江川先生と「不登校の生徒を説得できたら、
好きな進学校を推薦してもらう」という秘密の約束をする。
・・・のだが、肝心の説得相手である本田空にその約束がバレてしまう。

空は「毎日一つお願いを聞いてくれたら、
黙って学校に来てあげる」と言い、
突然彩花にキスをして・・・。

うかつな委員長とアンニュイな問題児、
二人の秘密な青春ラブコメディ!

(裏表紙紹介文より引用)

 

 

 

魅力

①彩花の感情の揺れ動き

 

1話で大学受験に有利となる推薦を得るためという餌に釣られ、空に学校へ来てもらうように家に向かった彩花だったが、このときには空が同じ中学校だったことも覚えていないことからも、全く何も感情を抱いていなかったことが分かる。

 

しかし、空から強引にキスをされてしまってからは、とにかく空のことが気になってしまって仕方が無い。


この気持ちの正体には気が付いていない彩花であり、女の子同士のキスがおかしいことにも自覚がある。

 

 

そんな彩花だが、1日1回のお願いの内容が一緒に下校することであるときには拍子抜けしていたり、空の顔を見つめてしまうことがあったり、空にハグされた状態で眠った上に脚まで絡ませていた。


少しずつ自分の心の中が空で埋められてきていて、推薦のために空と一緒にいるのか、空が喜ぶ姿や笑っている顔を見たいから一緒にいるのか、自分が何のために空のそばにいるのか分からなくなってきている。

 

 

こんな彩花の気持ちの変化や揺れ動きが回を重ねる毎に変わってきていて、その気持ちは彩花の表情やちょっとした仕草に表れており、こうした彩花の描写の変化から目が離せない作品となっている。

 

 

 

②空が見せる表情

 

空は普段から無気力な感じで無表情であり、あまり感情を表に出さないタイプである。

 

そんな空でも彩花とキスをした後やぬいぐるみでキスした後、キスを期待していたのかと茶化すときに、少し小悪魔のように微笑んで見せる。

 


樫風先生はこの小悪魔的な笑みを描くのが本当に上手で、普段とのギャップが相まっていて非常に魅力的に映えている。


普段の口調は少しおっとりしていて小さい声で喋っているイメージだが、こうして小悪魔モードの空はちょっと低い声で話しかけているように感じてしまうほど悪戯な笑みに見える。

 

 

 

まとめ

 

彩花の気持ちの変化や揺れ動きが回を重ねる毎に描写されていて、1巻の終わりの引きでは自分のモヤモヤした感情の正体が何なのか気になっている場面で終わっている。

 

 

空は5話で自分と仲良くしてくれてお願いまで聞いてくれている彩花に、こうしてくれるのは推薦のためかと聞く場面があった。


このことを聞いた真意はまだ分からないが、両親が離婚していて母親も単身赴任で1人ぼっちなことが関係しているように感じられる。


彩花は優しいから推薦のために仲良くしているのか聞いたら「そんなことないよ」と言ってくれると思った上で質問していて、その言葉で安心感を得たかったのだと推測される。


人の優しさを利用していて孤独や依存といった感情がにじみ出てくるような言葉で少し怖く感じる。


そして、嫌われてもいいのにという言葉から、空は嫌われてでも彩花と一緒にいたい理由があるのだと考えられる。

 



空が感情を表に出しにくい理由


両親が離婚した理由


不登校になっていた理由


彩花を求める本当の理由


中学のときに彩花を意識するようになった理由

 



この辺りがこの作品のストーリーの鍵となっていくと考えられる。


4月に1巻が発売されており、順調に行くと年末か年始には2巻が発売されるため、今からならまだ十分に追えるし是非購入して読んでいただきたい作品となっている。

 

 

また、1巻の続きが気になるという方には、コミック百合姫2020年6月号に第6話が掲載されているためこちらもオススメしたい。

 

 

 

 

余談

 

私は友だちだと思っていた子から突然好意を向けられる展開の百合が好きなので、彩花の友だちの3人の内の誰かが彩花を好きであったりしないかなと妄想していたり・・・


遊園地のときにハグしたり手を繋いでいたりキスしたりしていたのも、実は見てしまっていたり・・・あくまでも妄想にしかすぎないですが・・・


なんなら実は彩花には秘密で3人の中でカップルor好きな人がいたりするのも良き・・・

 

 

それにしても空が良いキャラしているのに闇が深そうな感じもグッとくるものがある。


5話で中学の頃から空は彩花のことを意識していたことが発覚したのも妄想を駆り立てられてしまう。

 

 

彩花が劣等感やトラウマに悩まされていたり、空には両親が居なかったりと王道な主従百合なように見えて実は奥が深い作品である。


回を重ねていく毎にどんどん深みに嵌まっていって、最終話前2,3話とかで大爆発しそうな予感。

 

 

 

 

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