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『あの娘にキスと白百合を』名言集&解説レビュー 第1巻

 ※この記事の内容は2019年5月に発行された『あの娘にキスと合同誌を』にて、私が寄稿した『「あの娘にキスと白百合を」各話を名言で振り返る』に加筆修正を加えた内容です。

 

 

 

 これから1巻ずつ『あの娘にキスと白百合を』の好きな部分を語らせていただきたいと思います。私がこの作品に魅力を感じている要素の一つに『言葉』があります。

 

 そこで、この度は作品の完結記念といたしまして、私の主観と偏見で選ばせていただいた本編各話の名言について軽い考察や回想を交えること共に、各巻巻頭に寄せられた言葉や各話の題名にも触れながら、缶乃先生が作り上げた『あの娘にキスと白百合を』という作品を振り返っていき、改めてその魅力を再認識していきたいと思います。

 

 『あの娘にキスと白百合を』をまだ読んだことがないという方には少しネタバレになってしまうかもしれないためご注意ください。


全巻読んだことがあるという方も、手元に用意して一緒に振り返りながら読み返していくことで、新たな発見することの手助けになれたら幸いです。

 

 

第1巻

 

 

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 All's fair in love and war.
『恋と戦争は手段を選ばない。』

(第1巻1頁より)

 こちらの言葉は英語圏では有名なことわざのようなものらしく、2003年に公開された映画『10日間で男を上手にフル方法』(原題:How to Lose a Guy in 10 Days)の劇中で用いられたものが有名とのことでした。

 

 

 直訳すると『恋と戦争では全てが正しい』となりますが、この言葉の真意は、人間はある目的のためなら手段を選ばないというものだと推測できます。

ですが、この作品においては『好きな人を自分の物にするためには手段を選ばない』もしくは『好きな人のためなら何でもする』というような解釈が適切だと私は感じました。

 表紙には上にイチゴの花と、下には題名にも使われている白百合が描かれています。


 白百合は聖母マリアの象徴とされており、花言葉は『汚れなき純潔』でありマリア様が処女性であったことに由来しているのだと思いました。


描かれている白百合は角度の関係で見えないのかもしれないが、雄しべが摘み取られているのがわかります。

 


 花は雄しべから出る花粉が雌しべに受粉することで実ができ種を作り子孫を残しますが、一度受粉してしまうと花を咲かせている役割を果たすためにすぐに枯れてしまう。

そんな風に女性の高潔さや登場人物の若さを表現しているものだと考えました。

 

 

 イチゴの花には『尊重と愛情』などの花言葉があります。

イチゴの花が描かれているのは、恐らく第5話の題名『さらばストロベリー・エイジ』から採用されていると思いますが、

この『尊重と愛情』は今回の第1巻で描かれている瀬尾と二階堂のカップルに相応しい言葉になっていると考えました。

 


 その理由は下の各話の解説で明らかとなるが、第3話と4話では二階堂のマネージャーとしての選手への尊敬も見られることに加え、瀬尾本人に対する愛がテーマとして描かれていたからです。

ここまで考察してしまうとただのこじつけのような後出しの深読みであまり好きではないため、あくまでも一つの見方や感想としてイチゴの花言葉を紹介させていただきました。

 

 

 

 

第1話 天才さんと秀才さん

 

 黒沢「約束だよ きっとあたしのこと 完璧に打ち負かしてみせてね」

(第1巻1話44頁)

 この作品の主要な登場人物の関係の幕開けを示す名言であると同時に、黒沢ゆりねという人物に隠された性格、自尊心の高さ、秘めたる過去、ミステリアスな一面など様々な印象を与える言葉になっています。


まさにこの言葉から全ての物語が始まったといっても過言ではない、本作品を通じても五本の指に入る名言であると思います。


題名については、第10巻46話『白峰さんと黒沢さん』との対比になっています。

 

 

 名言と言えば百合小説のバイブルとも言うべき『マリア様がみてる』(著:今野緒雪)の名シーンの台詞「タイが、曲がっていてよ」(第1巻10頁より)についても、

白峰あやかは「タイが曲がっているわよ」(第1巻1話3頁より)と発言しており、缶乃先生のオマージュからもリスペクトを込めた思いが伝わってきました。

 

 

 余談ですが、第1話の初めの1学期中間の制服と1学期末の制服には違いがありますが、1話の中で衣替えのシーズンをまたいで2パターンの制服が見られる回は、

後にも先にもこの回のみであったと把握しています(把握漏れがありましたら申し訳ありません)


加えて、黒沢が寝ぼけ眼を擦りながら初見で解いた「難関大入試にも出てきて解くのに30分かかる問題(白峰談)」がありましたが、

1年生の1学期の(恐らく)物理の授業で問題として出されるなんて、清蘭学園の中高大一貫教育はとてつもなくハイレベルなものだと思いました。


そこで1位と2位の座にいる2人って一体何者なんでしょう・・・

 

 

 

第2話 孤島のモンスター

 

 黒沢「白峰さんがいればいいの あとは何も欲しくない・・・」

(第1巻2話71頁)

 孤島のモンスターとはまさしく黒沢を形容するにふさわしい言葉だと思います。

天才であるがゆえの孤独、本人の意思に反して周りから疎ましく思われてしまうのはまさに”モンスター”です。


そのモンスターは自らの周りに海を広げ、そこへ残った島に閉じ籠もってしまいました。

 

 

 そんなモンスターは「ただの人だってわからせてあげるわ」(第1巻2話40頁より)と罵声を浴びせてきた白峰に好意ないし興味を示しました。

他の人から見れば羨ましく妬ましく疎ましい、欲しくて手に入れたわけではない自分の才能。

そんなものなんか要らない、それよりも白峰が欲しいという黒沢が示した独占欲、所有欲の現れであることと同時に、孤独ゆえの寂しさを感じ取ることができる発言でした。

次頁で「白峰さんになりたかったな」(第1巻2話72頁より)という発言の後に、白峰の首筋への甘噛みしたシーンは、第1巻の名シーンだと思います。

 

 余談ですが、2話の初め英語の授業中に居眠りしていた黒沢が教科書を音読するように言われたとき(第1巻60頁)に、教科書を見ずに諳んじていたの作品は『不思議の国のアリス』(Chapter 1より)でした。しかし内容はChapter1の冒頭部分を5回くらい繰り返しているだけ・・・なんて言うのは野暮かも知れません。

 

 

 

第3話 青春は銃創

 

 瀬尾「私にちゃんと伝わるように 安心させてよ」

(第1巻3話116頁)

 二階堂「いつだって一番そばで見てるわ 私の半身」

(同117頁)

 初の陸上部回であった第3話です。


メインの2人とは違った方向の精神的な依存関係に、心を打たれた読者の方も多いと思います。

 

 

 瀬尾瑞希は自らが走るための目的を作れず、それを他者に依存してしまうほど自尊心が小さく気弱な性格の持ち主です。


そんな弱い心を持っている瀬尾の口から漏れたこの言葉は、表情も相まって私も心をくすぐられました。


そんな王子様に応えるべく、ひざまずいて手の甲にキスをして忠誠と敬愛を誓う二階堂萌。この場面での王子様は果たして一体どちらであるのか。


瀬尾という王子様を造り上げている二階堂の従順さを見ることができる素晴らしい回でありました。

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 3話の扉絵(第1巻86頁)は、中等部の頃の二階堂と瀬尾と今の2人が対比で描かれていますが、中等部の頃の方には背景に花が散りばめられています。


 この花についてはよく調べてみたもののハッキリとした正解が得られませんでした。

しかし、小花として筒状花が真ん中に集まっていて周りに舌状花が規則正しく並んでいることから頭状花序の特徴を持つキク科の花であることが考えられます。


 そこから推測される花として、シャスタ・デイジーオオキンケイギク、ユウゼンギク、スプレーギクの一種などが挙げられましたが、どれも自分の中で納得のいくものではありませんでした。
 

 こちらの花の種類について詳しい方や、この花ではないかという情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、Twitterやコメント欄から教えていただけたら幸いです。

 

 

 

第4話 シークレットオブマイガール

 

 瀬尾「萌に似合う私になるたびに 自分のこともすこし・・・ 好きになれる気がするから」

(第1巻4話147~148頁)

 ”secret of my girl”『私の友達の秘密』


 今回は二階堂目線からの題名ですが、マイガールとは友達くらいの関係性を意味しているものだと思います。


確かに作中でも二階堂は瀬尾のことを友達と言っていますが、それと同時に大事な人、大好きということも、直接言葉にはしないものの胸の内には感じていると思います。


果たしてこれが友達と呼べる関係なのだろうか。


読者もそんなことに一緒にドキドキさせられるような展開もこの作品の魅力の一つだと思います。

 

 

 女の子が髪を切る理由とは何なのか。それは失恋や気分転換、季節に合わせて、挑戦であったり様々なことがあるかと思います。


それが瀬尾にとっては、二階堂の隣に立つのに相応しい人間になるための瀬尾なりの努力の形であり、ずっと側にいるのだという決意の表れでもあると感じました。

 

 

 普段滅多に甘えを見せない二階堂が瑞希のことは全部知りたい わがままだね ゆるしてね」(第1巻4話142頁)と、めずらしく瀬尾に甘えた一面を見せた瞬間がありました。(こちらの台詞も名言集に加えたい素敵な言葉ですね)


そんな二階堂に対し、髪を手に取りキスをしながら想いを伝える瀬尾はまさしく王子様のようで、お互いがそれぞれの想いを胸にしてそれに応えようとする姿は、

選手とマネージャーという垣根を越えた、二人だけの特別な関係であるのだと感じました。

 

 

 4話の扉絵(第1巻123頁)で瀬尾が髪飾りにしているのはガーベラだと考えられます。

ガーベラもキク科の花であり3話扉絵の花と似ていますが小花の付き方や筒状花の形状が少し異なっています。

加えて、缶乃先生が以前Twitterに掲載されていたガーベラのイラスト(リンク)に似ているため、おそらくこれで合っているかと思います。


ガーベラには色ごとに花言葉が異なっていますが、ガーベラ全般としては『希望』や『前進』という花言葉があるそうです。


どちらの言葉も上で紹介した瀬尾の名言にピッタリであり、瀬尾が自分の気持ちに一歩踏み出すことができたことに加え、

2人の関係も一歩前進したことを祝して缶乃先生が瀬尾に贈った髪飾りだと思いました。

 

 

 

第5話 さらばストロベリー・エイジ

 

黒沢「今日会いたかった ひとりがさみしいこと 思い出してしまったから」

(第1巻5話176頁)

 題名は日本語にすると『さらば、イチゴ(15)歳』ということであり、黒沢が16歳の誕生日を迎える回でした。


15歳という年齢はまさしくイチゴのように甘酸っぱい青春を謳歌する時であります。

そんな甘酸っぱい時にどのような青春時代を過ごして、どのような恋愛をしてどんな想いを味わっていくことになるのか。

 

 

 第5話は誕生日に白峰に会いに行くもそれが叶わなかった黒沢の話から物語が始まりました。

そんな黒沢は午前中に陸上部へ顔を出し、午後には上原愛とショッピングを楽しむという、なんとも黒沢らしくない友達と過ごす休日を体験した。


そして黒沢がやっと白峰に会えたときに、白峰への特別な想いと自身が抱えていた寂しさに気付いていまったことから漏れたこの言葉を、第5話における名言とさせていただきました。

 

 

 白峰が黒沢に渡した花束には、白百合を引き立たせるようにかすみ草も加えられています。

かすみ草の花言葉には『感謝』や『清らか』などがあるそうで、この花束からも白峰なりの黒沢への感情を感じ取ることができます。

 

 

↓第2巻の記事こちらから↓

 

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