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新型コロナウイルス治療薬『ベクルリー(レムデシビル)』の作用機序は?本当に効くの?

 

 

 

概要

 

 健康被害が重大で蔓延の危険性がある場合などの厳しい条件を通過し、特例承認の制度を適用することで、新型コロナウイルスの治療薬として承認されたベクルリー(レムデシビル)ですが、私が薬理学や薬物治療学を勉強していたときにはもちろん存在していなかったため、この薬のことに関して何も知りませんでした。

 

 薬は毎年新しい薬が増えていて、作用機序(薬の効き方)が同じだけど別の会社が出していたりするものは『へぇー○○受容体拮抗薬に新しいの追加されたのね』程度で良いけど、抗体医薬品とか画期的新薬が出ていたりすると『何コレ、まず何の薬?てか作用機序どうなってんの?聞いたこと無い抗体がターゲットなんだけど・・・代表的な副作用は?併用禁忌は?』ってなります・・・。


 実際の医療現場の薬剤師の先生方はこれどころでは済まないので本当に頭が上がりません・・・日々自己研鑽に努めるのが薬剤師の使命であります・・・。

 

 

 今年度の薬剤師国家試験に出ることは無いだろうと楽観視しているけど、今後の臨床現場で見る機会があるかもしれないなら勉強しておこうと思ったのがこの記事を書いたきっかけです。

 

 

 新型コロナウイルス治療薬『ベクルリー(レムデシビル)』について、一体どうやって効く薬なのかを分かり易く解説して、最後に本当にそれって効くの?という疑問に対して、治療成績について海外の論文を読んでまとめてみました。


 情報の加工やエビデンスレベルには十分留意した内容を書いていますが、あくまでも学生であり医療関係者として書いている内容ではないことをご理解ください。

 

 

 

 

 

 

ベクルリー(レムデシビル)について

 

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製造販売元:ギリアド・サイエンシズ(アメリカ)


効能又は効果
SARS-CoV-2 による感染症

効能又は効果に関連する注意
SARS-CoV-2 による感染症に対する本剤の有効性及び安全性に関して得られている情報は極めて限られていることから、最新の情報に留意して慎重に投与の可否を判断すること。

臨床試験等における主な投与経験を踏まえ、現時点では原則として、酸素飽和度 94%(室内気)以下、又は酸素吸入を要する、又は体外式膜型人工肺(ECMO)導入、又は侵襲的人工呼吸器管理を要する重症患者を対象に投与を行うこと。

用法及び用量
 通常、成人及び体重40 kg 以上の小児にはレムデシビルとして、投与初日に200 mgを、投与2日目以降は100 mgを1日1回点滴静注する。

 通常、体重3.5 kg以上40 kg未満の小児にはレムデシビルとして、投与初日に5 mg/kgを、投与2日目以降は2.5 mg/kgを1日1回点滴静注する。
なお、総投与期間は 10 日までとする。

用法及び用量に関連する注意
①生理食塩液に添加し、30分から120分かけて点滴静注すること。

②本剤の最適な投与期間は確立していないが、目安として、ECMO又は侵襲的人工呼吸器管理が導入されている患者では総投与期間は10日間までとし、ECMO又は侵襲的人工呼吸器管理が導入されていない患者では5日目まで、症状の改善が認められない場合には 10 日目まで投与する。

体重 3.5 kg 以上 40 kg 未満の小児には、点滴静注液は推奨されない

小児患者における薬物動態は不明である。

特定の背景を有する患者に関する注意
腎機能障害患者
 添加物スルホブチルエーテル β-シクロデキストリンナトリウムの尿細管への蓄積により、腎機能障害が悪化するおそれがある非臨床試験でレムデシビルに腎尿細管への影響が認められている。腎機能障害を有する患者を対象とした臨床試験は実施していない。

重度の腎機能障害(成人、乳児、幼児及び小児は eGFR が30 mL/min/1.73m^2未満、正期産新生児(7 日~28日)では血清クレアチニン1 mg/dL以上)の患者
 投与は推奨しない。治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を考慮すること。

肝機能障害患者
 ALT が基準範囲上限の 5 倍以上の患者→投与しないことが望ましい
 ALT が基準範囲上限の 5 倍未満の患者→治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

妊婦
 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

小児等
 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

高齢者
 患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。

(ギリアド・サイエンシズ株式会社(2020.5)『ベクルリー®点滴静注液 100 mg、ベクルリー®点滴静注用 100 mg添付文書(第1版)』より抜粋)

 

  まず分かったことは点滴薬だということでした。本当にこのレベルで何も知らなかったのが恥ずかしいレベルです。

 


点滴薬でまず注目するべき事項は用量用法および投与方法です。

 

 主に抗菌薬の点滴薬などでは、TDM(Therapeutic Drug Monitoring:治療薬物モニタリング)といって、患者さんの体重から投与量を決めて、さらに数日後に患者さんから血液を採らせていただくことを行う薬剤がいくつかあります。


 これを行うことで何をしているのかというと、患者さんの血液の中に、薬が治療のための十分な濃度あるかどうか、濃度が高すぎて副作用のリスクが高くなっていないか、投与直後に一気に濃度が上がりすぎていないか等を調べることで、次に患者さんへ投与する薬の量を管理することで、より良い医療を提供しています。


 今回の『ベクルリー(レムデシビル)』は抗ウイルス薬の分類になるため抗菌薬ではなく、添付文書にもTDMの記載はありませんでした。

 

 

 また投与方法や用法用量については文字ではわかりにくい部分があるため、以下のような図を作って簡単に表してみました。

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図1.ベクルリー(レムデシビル)における用法用量および注意事項

(ギリアド・サイエンシズ株式会社(2020.5)『ベクルリー®点滴静注液 100 mg、ベクルリー®点滴静注用 100 mg添付文書(第1版)』より抜粋した内容を加工した物)

 

 初日は2日目より2倍の量の薬を投与していますが、これは『負荷投与』というもので、1回目の服用の際に通常よりも多い量を服用することで、早い段階で治療に必要な血中薬物濃度を目指すというものです。

 

 次に、特定の背景を有する患者に関する注意の欄に腎機能障害患者へ投与の際は、添加物スルホブチルエーテル β-シクロデキストリンナトリウムが尿細管に蓄積することで腎機能障害が悪化するとされているが、これはブイフェンド(ボリコナゾール)という抗真菌薬においても同じ添加物を使用しており同様に報告されているものです。
  

 

 

作用機序

 

 レムデシビルはアデノシンヌクレオシドのプロドラッグであり、加水分解等による代謝を経て、ヌクレオシド類似体の一リン酸体となった後、細胞内に分布し、代謝されてヌクレオシド三リン酸型の活性代謝物を生成する。

 

 活性代謝物はアデノシン三リン酸(ATP)の類似体として、SARS-CoV-2 RNA依存性RNAポリメラーゼによって新たに合成されるRNA鎖に天然基質 ATPと競合して取り込まれ、ウイルスの複製におけるRNA鎖の伸長反応を取り込みから少し遅れて停止させる。

 

 活性代謝物は、ヒト由来のDNAポリメラーゼα、β及びRNAポリメラーゼ II、並びにミトコンドリアDNAポリメラーゼγ及びミトコンドリアRNAポリメラーゼに対する阻害作用(IC50値)はいずれも>200 μMであった。

(ギリアド・サイエンシズ株式会社(2020.5)『ベクルリー®点滴静注液 100 mg、ベクルリー®点滴静注用 100 mg添付文書(第1版)』より抜粋)

 

  薬学生にとって新薬と聞くとまず気になる作用機序について、添付文書に書かれている内容を引用しました。


 といっても、薬学や生物の知識があまり無い方にとっては読んでも意味が分からないと思うので、少し噛み砕いて説明していこうと思います。

 

 まず初めの段落について、『レムデシビルはアデノシンヌクレオシドのプロドラッグ』という言葉が気になるかと思いますが、これは薬が身体の中で代謝されるとアデニン(塩基)とリボース(糖)が結合した『アデノシン』という種類の『ヌクレオシド』に変化するということを示しています。

 このように薬が身体の中に入って分解・代謝されないと薬として効果を発揮しないよ、ということを『プロドラッグ』と言います。

 

 『プロドラッグ』という言葉は、『プロ』フェッショナルな『ドラッグ』という意味ではなくて、ドラッグという単語にpro-という『前の』という意味を持つ接頭辞を伴っている状態で、『薬になる前の状態』と言うのが近しい表現だと思います。


 ここで、そのままの状態の薬を飲めばもっと速く効くから、回りくどい『プロドラッグ』じゃなくても良いじゃんと思う方もいるかもしれませんが、すぐに効いてしまったり身体の中に入ってしまうと副作用が現れやすかったり、すぐ効いてすぐ効果が無くなっちゃて治療に使えないといったことがあるので、これらのデメリットをカバーする目的で『プロドラッグ』のような形にしていることがあります。

 

 そして次の段落ですが、少し難しい言葉が多いため詳しい解説は省きますが、まず新型コロナウイルスSARS-CoV-1)は私たちの細胞の中に間借りをしてRNAという子供のようなものをどんどん複製して、それが新たなウイルスとなって細胞から旅立っていき、また他の細胞で増殖を繰り返していくことで爆発的に数を増やしていきます

 

 このRNAの複製に関わっているのが『RNA依存性RNAポリメラーゼ』というものであり、さらにこの複製をするときに私たちの身体の中にある材料として使われているのが『アデノシン三リン酸(ATP)』という生体物質です。

 

 そして『ベクルリー(レムデシビル)』が身体の中に入って薬として効く状態に消化・代謝されたとき、この『アデノシン三リン酸(ATP)』に似た形をしていて、新型コロナウイルスSARS-CoV-1)はそれと間違えて複製したRNAに『ベクルリー(レムデシビル)』を使ってしまい、増殖を止めるといったことが書かれています。(噛み砕いているのか回りくどくしているのか・・・)

 

 一番初めに治療薬の候補として挙げられていた『アビガン(ファビピラビル)』についても、作用機序は『細胞内でリボシル三リン酸体(ファビピラビルRTP)に代謝され、ファビピラビルRTPがインフルエンザウイルスの複製に関与するRNAポリメラーゼを選択的に阻害すると考えられている。(富士フイルム富山化学(2019)『アビガン200mg錠添付文書(第7版)』より抜粋)』とされており、少し作用機序は異なるもののウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼの阻害をすることで、ウイルスの増殖を抑制する薬となっている。

 

 治療薬と聞くと直接ウイルスをやっつけてくれると想像する方が多いかと思いますが、実際にはそんなことは無くて大半の薬がウイルスの増殖を抑えるといった働きを持っていて、インフルエンザ治療薬として有名な『タミフル(オセルタミビル)』や『リレンザ(ザナミビル)』、『イナビル(ラニナミビル)』も全てノイラミニダーゼ阻害薬という種類でウイルスの増殖を抑える薬です。

 

 先ほどの説明で言うところの、増殖した新たなウイルスは細胞の外へ出て行ってまた増殖するといったことをしていますが、この外へ出て行くのを手助けしている『ノイラミニダーゼ』を阻害(邪魔)することで他の細胞で再び増殖するのを防ぐ作用機序になっています。

 

 そのため、インフルエンザには治療薬があるから大丈夫だと思っている方が少なからずいますが、あくまでも増殖を抑えてくれるだけなので、日々の手洗いや健康的な生活を心がけてインフルエンザにならないことが一番重要なことだと思います。

 


 これは今回の新型コロナウイルスSARS-CoV-1)による感染症にも言えることですが、今回こうして治療薬として『ベクルリー(レムデシビル)』が承認されましたが、薬があるなら安心という気持ちにはならず、一人一人がウイルスに屈しないための意識が非常に大切だと思いました。

 

 

 

 

治療成績

 

 ここで『特例で承認したけどエビデンスは?本当に効くの?』という疑問が生まれました。

 

 

 ここから先は個人的に調べて読んだ論文において、どのような報告が挙げられているのかということをまとめてみました。


 情報元の記載について行っていますが、こちらに書かれていることが100%正しい物だと思わず、気になる内容や勉強したい内容があったら、リンク先の原著論文を読んで正確な情報を確認していただきたいと思います。

 

 

 

アメリカにおける最初のCovid-19肺炎患者の症例報告

原著論文:First Case of 2019 Novel Coronavirus in the United States

 

患者情報

・35歳男性
非喫煙者
・受診4日前から咳と発熱
・受診4日前に武漢市から帰国
・既往歴・・・高トリグリセリド血症

・体温(BT)・・・37.2度
・血圧(BP)・・・134/87mmHg
・心拍数(HR)・・・110回/min
・呼吸数(RR)・・・16回/min
・酸素飽和度(室内気)・・・96%

 


受診時
 受診時(1月19日)に肺の聴診を行ったところ低調性連続音rhonchi(ロンカイ)が聴取されたが、胸部のレントゲン画像には肺炎像は見られず異常は無かった

 

入院1日目(発症5日目)
 受診1日後、RT-PCR検査において陽性の判定が出て入院となる。この時点では空咳吐き気・嘔吐が2日間続いていた。息切れや胸痛はなくバイタルサインは正常な範囲内であった。

 入院後から、2Lの生理食塩水と吐き気止めとしてオンダンセトロンを含む支持療法を受けた。

 

入院2日目~5日目(発症6日目~9日目)
 頻脈を伴う断続的な発熱を除いて、バイタルサインはほぼ安定していた。
入院2日目の午後に軟便腹部不快感が報告された。軟便については1晩で2回のエピソードがあった。

 この期間には対症療法を行っており、必要に応じてアセトアミノフェン650 mgを4時間ごとに、イブプロフェン600 mgを6時間ごとに投与する解熱療法を実施し、入院初日から6日後までに生理食塩水が合計で6L投与されていた。

 

入院7日目(発症11日目)
 エボラウイルス薬として開発中であったレムデシビルの投与を開始した。このときには既に肺の聴診では両肺にラ音が認められ、胸部レントゲンでは肺炎像が確認されるようになり、酸素飽和度が90%に低下していたため鼻カニューレを用いた毎分2Lでの酸素投与が開始されていた。

 

入院8日目(発症12日目)
 患者の臨床状態は改善した。酸素投与が中止され、酸素飽和度の値は94~96%に改善した 。
 食欲は元に戻り、断続的な空咳と鼻水が出ることを除いて症状は見られなくなった。

 

入院11日目(発症15日目)
 患者は入院しているが発熱は無く、軽い咳以外に症状はなくなっていた

 

 

 この症例ではベクルリー(レムデシビル)を投与した翌日から症状が改善に向かっている。

しかし、レムデシビルの投与と症状の改善にあるのかどうかという点については、さらなる検討が求められると考えた。


論文においても『SARS-Cov-2感染患者の治療のためにレムデシビルとその他の治験薬の安全性と有効性を判断するには、ランダム化比較試験行うことが必要である』と著者によって書かれている。

 

 

 

重度COVID-19患者53人に対するレムデシビルの治療成績

原著論文:Compassionate Use of Remdesivir for Patients with Severe Covid-19

 

対象患者

1.RT-PCR検査でSARS-CoV-2感染の診断が確定している入院患者

2.酸素飽和度(室内気)*1が94%以下又は酸素投与が必要な患者

3.クレアチニンリアランス*2が30mL/minを超えていること

4.アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の血清レベルが正常値上限の5倍未満

5.Covid-19の他の治験薬を使用しないことに同意する者

 

 

投与方法

 1日目に200 mg静脈内投与し、その後9日間は100mg/日の投与量で構成されており、全10日間の投与を行った。

 患者の追跡については、レムデシビルによる治療の開始後少なくとも28日間、または退院あるいは死亡まで継続することとした。

 

 

患者情報

 合計で61人の患者が少なくとも1回レムデシビルの投与を受け、この内8人はデータの不備等により外されており、残りの53人の患者の内40人(75%)が10日間投与され、10人(19%)が5〜9日、3人(6%)が5日未満の投与日数となった。

 患者53人の国籍の内訳は、アメリカ(22人)、日本(9人)、イタリア(12人)、オーストリア(1人)、フランス(4人)、ドイツ(2人)、オランダ(1人)、スペイン(1人)、カナダ(1人)となった。

 患者の内75%が男性で、範囲は23〜82歳、年齢の中央値は64歳でした。

 大多数の患者(34人)は侵襲的人工呼吸の治療を受けており、そのうち30人が機械的換気を受け、4人がECMOによる治療を受けていた。

 発症からレムデシビルによる治療が開始される期間の中央値は12日でした。

 

 

治療成績

 レムデシビルの初回投与を受けてから中央値18日間の追跡期間において、53人の患者のうち36人(68%)が呼吸機能に改善を示したのに対し、53人中8人(15%)は悪化を示した。

 

 同様に、室内気呼吸または低流量の酸素投与を受けていた12人の患者全員と、非侵襲的酸素サポート(NIPPVまたは高流量酸素投与)を受けていた7人中5人(71%)に改善が見られました。

 

 侵襲的人工呼吸療を受けていた患者30人中17人(57%)は抜管され、ECMOによる治療を受けていた患者4人中3人(75%)がECMO離脱に至ったことは特筆されるべき点である

 

死亡率

 53人の患者のうち7人(13%)はレムデシビル治療終了後に死亡した。

この7人には侵襲的人工呼吸による治療を受けていた34人中6人(18%)と非侵襲的酸素投与を受けていた19人中1人(5%)が含まれている。

 

 

安全性

 32人の患者(60%)において追跡中に有害事象が報告された。

最も多く確認された有害事象は、肝酵素の増加、下痢、発疹、腎機能障害、低血圧が挙げられる。


 12人の患者(23%)においては重篤有害事象が報告された。
最も確認された重篤な有害事象は、多臓器不全症候群、敗血性ショック、急性腎障害、低血圧が挙げられる。

 

 こちらの論文でもレムデシビルの投与によって症状に改善が確認されているが、やはりこの症状の改善がレムデシビルによるものだという根拠に乏しい。

論文の著者は『COVID-19患者に対するレムデシビルの安全性と副作用の調査については、プラセボ対照試験による適切な評価が必要』だと述べている。

 

 

中国・武漢における二重盲検無作為化比較試験

原著論文:Remdesivir in adults with severe COVID-19: a randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial

 

調査方法

 レムデシビル(1日目は200mg、2~10日目は100mgを1日1回投与)による治療を行うレムデシビル群と、プラセボによる治療のプラセボ群について、ランダムに2:1の割合で割り付けを行った。

試験には調査条件に適合した237人の患者が参加し、レムデシビル群に158人、プラセボ群がに79人を割り付けたが、プラセボ群の1人の患者が離脱したためそれを除外した全236人を分析の対象とした。

 

結果

 レムデシビル又はプラセボを投与してから、臨床状態が改善したと判定されるまでの期間は、レムデシビル群が中央値21.0日、プラセボ群では中央値23.0日という結果が得られた。(ハザード比:1.23 [95%信頼区間0.87~1.75])

また、統計的に有意ではないが、発症後10日以内にレムデシビルorプラセボを服用し始めた患者で比較すると、レムデシビルによる治療を受けている患者はプラセボ群よりも数値的に速い臨床状態の改善が確認された。(ハザード比:1.52 [95%信頼区間0.95~2.43])

 

 この論文の著者は『重篤なCOVID-19患者に対して、レムデシビルの静脈内投与についてプラセボと比較したとき、臨床状態の改善までの期間や死亡率、ウイルスの減少を大幅に向上させないという結果が得られたが、より規模を大きくした臨床試験の結果が求められている』と記した。

 

 

アメリカにおける二重盲検無作為化比較試験

参考文献:
NIH Clinical Trial Shows Remdesivir Accelerates Recovery from Advanced COVID-19
Adaptive COVID-19 Treatment Trial (ACTT)/ clinicaltrials.gov

 

対象患者

1.RT-PCR検査でSARS-CoV-2感染の診断が確定している入院患者

2.18~99歳の男性もしくは妊娠していない女性

3.肺に浸潤影が見られる又は酸素飽和度(室内気)が94%以下又は酸素投与機械的換気が必要な患者

4.推定糸球体濾過量eGFRが30mL/minを超えていること

5.アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の血清レベルが正常値上限の5倍未満

 

投与方法

 レムデシビル群とプラセボ群を1対1の割合で割り付けを行い、レムデシビル群には初日に200mg、その後最長で10日目まで100mgを静脈内投与した。

 

治療成績

 Adaptive COVID-19 Treatment Trial(ACTT)の予備結果において、レムデシビルを投与した患者は、プラセボを投与した患者よりも臨床的な回復までに要した期間が31%短いことを示した。

レムデシビルによる治療を受けた患者の回復期間の中央値は15日間であり、プラセボ群では11日間であった。

 

 しかし死亡率については、レムデシビル群で8.0%、プラセボ群で11.6%とp値が0.059という結果を示しており、レムデシビルがプラセボと比較して死亡率を減少させるとは言えない結果となったが、有意水準5%においてはかなり近しい値であるため、さらに対象母数が増えてくれば収まってくるかもしれないと考えた。

 先述した武漢市における同様の二重盲検無作為化比較試験では差に有意がないとされていたたが、これは患者の母数が少なかかったことが考えられる。

 

 

 

最後に

 

 今、世界的に未曾有の危機的状況を迎えている中、最前線で未知の新興感染症に立ち向かって目の前の命と向き合い続けている、世界の医療従事者の方々に最大限の敬意を表します。

 

 

 

 

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*1:肺が酸素をどのくらい取り込めているのか表す数値

*2:腎臓がどのくらい働いているか表す指標

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